音円盤アーカイブス(2006年3月)

NATE NAJAR
ここいらで、ちょっと一休み、クールダウンといきましょう。
いつも、ごりごりの新譜ばっかり聴いていると疲れてしまい聴く気が失せる日がたまにありませんか?
何事にもペース配分が必要です。私はそんな事にならないように、女性ボーカルやある種のピアノトリオ、ボサノバのCDを鑑賞の折、必ず織り込む事にしています。
そうする事によってリフレッシュされるし、また聴こうという気に慣れるのです。
あー、何も女性ボーカルやある種のピアノトリオ、ボサノバを軽視しているのではありませんよ。
同等の扱いです。ただ、癒し、和みの要素があるので、そういう用途で用いているだけなのです。
長時間集中して聴くのにはこれが一番!

NATE NAJARはフロリダで活躍しているギタリストで、このアルバムはタイトル通り、涼しいジャズが演奏されています。
3曲目「MORE」確か「世界残酷物語」っていう映画のテーマ曲に使われていて中学の時に見て印象に残っている。
乾いたアコースティックギターの音がとても心地良くて和みますねぇ。
「リパブリック賛歌」や「おいらは老カウボーイ」も同様にアメリカ南部の片田舎の昼下がりのような、のんびりとした少しダルなスローな雰囲気で演奏されるのであります。

人によってはイージーリスニングジャズではないかと言う声が出るだろう。
そう、その通り、イージーリスニングジャズです、これは。
せこせこしたところのないまったりとした本格的イージーリスニングジャズであります。
アドリブも平易で唄うようなフレーズをネイトのセミアコギターが奏で、続くビブラフォンがクールさをさらに倍化させる。
テーマの合奏部分のところなど、ピアノは入っていないけどジョージ・シアリングのバンドを連想させるところがある。
こんなのばかり聴いていると飽きちゃうだろうけど、箸休め的に使用するのがジャズファンの正しい使い方かもしれない。
メンバーはNATE NAJARSAM KOPPELMAN(VIB)STEVE BOISEN(B)STEVEN BUCHALTZ(DS)
2002年作品
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TONY JONES TRIO
レア本で一躍脚光を浴びたTAD WEEDが入っていたので注文したのだけど残念ながら少量しか入荷しなかったので現在ショップの方ではまだ販売していません。
「ステラ・バイ・スターライト」や「ジョニー・カム・レイトリー」...
おおぅ!エグベルト・ギスモンティの「LORO」を演っているではありませんか!
TAD WEEDのピアノが素晴らしい。
クリスタルグラスに光が当たってキラキラ虹色の輝きを放っているような感じ。
70年代のハンプトン・ホーズやビル・エバンス・トリオが持っていたほの暗さを持っているところもいいですね。
「JOHNNY COME LATELY」では、ラグタイムピアノやわざとタイムをずらしたりして変化をつけているところも面白い。アドリブになるとロマネスク歌謡性とフリーアクション技をバランスよく組み合わせた煌びやかなソロワークを淀みなく展開。
構成の勝利です。そしてアルバムリーダーのシンバルの音を聴いてもらいたいですね。
昔、富樫雅彦のドラムに内緒でちょっと触ったことがあるけど、その時に出たような長く透き通る、精巧な工芸品のような美しい煌きある音。
工芸品といえば4曲目「FELLINI」などまさにヨーロッパのハンドクラフトでつくりあげられた温もりを感じさせる工芸品をイメージさせる曲。
WEEDのピアノはここでは思い切りエンリコしています。
エグベルト・ギスモンティの「LORO」も期待を裏切らない出来。
録音は1989年と少し古いけど予想をはるかに上回る作品でした。
メンバーはTAD WEED(P)KEN FILIANO(B)TONY HJONES(DS)
録音は1989年7月25日
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DERRICK GARDNER
NYで現在フリーランスで活躍するDERRICK GARDNERの2005年セクステット作品。
この作品、実は最初に個人輸入をはじめるときに目をつけていたものなのですが、
リリース案内時、まだ入荷しておらずその時に発注できなかったのです。
そのうちに名前を控えていなかったものだから行方不明になってしまい、半年経ち、先日ようやく発見、発注できたという経緯のある作品。

DERRICK GARDNERって初耳だと思っていたけど、ミドルネームはアールなのが分かって、一挙に親しみが湧いてきた。アール・ガードナーの名前は時々目にしているから・・・この作品に参加しているVINCENT GARDNERはアール・ガードナーの弟で現在LCJOのメンバーとしても活躍しています。
ピアノがやけに上手いなぁと思っていたら何とANTHONY WONSEYが参加しているではありませんか?
演奏されている音楽はこのジャケットのように、60年代初頭のVEEJAYあたりのジャズアルバムが持っていたこってりとした、黒人音楽としてジャズが最高に輝いていた魅力たっぷりの質感を持ち合わせているのです。
DERRICK GARDNERのトランペットはちょっとLEE MORGANのようなとっぽさ、不良性を感じさせるプレイで、最近の優等生然としたジャズに物足りなさを感じている方には絶対お薦めです。
4曲目のアールのミュートプレイも、60年代の深夜の黒人が集うクラブの空気感が感じられてイイですね!
ショーターの「SEEDS OF SIN」。
あまりカバーされない曲ですけど、涙でますわ、ほんとに。
このアルバムは今月の推薦盤に決定だな!
メンバーはDERRICK GARDNER(TP)VINCENT GARDNER(TB)ROBERT DIXON(TS)ANTHONY WONSEY(P)GERALD CANNON(B)MONTEZ COLEMAN(DS)JAKUBA GRIFFIN(DS)KHALIL KWAME BELL(PER)
録音は2001年11月19日、2002年6月29日 SYSTEM TWO STUDIOS BROOKLYN,NY
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KEVIN HAYS
KEVIN HAYSの今のところ一番新しいピアノトリオ作で、新しいといっても2001年12月の録音なのですが、今年ようやくアーティストシェアからトリオの新作がリリースされそうです。
この作品、去年から何度となくショップに入荷しているのだけれど、その都度売切れてしまうロングセラーで、何故そんなに売れるのか理由を突き止めてみると、どうやらケヴィン・ヘイズよりビル・ステュアート目当てで買っているお客さんが多いようなのであります。
90年代初めにデビューしたケヴィン・ヘイズはSTEEPLECHASEから当初アルバムを発表し、個性の面では物足りないけど結構いいピアニストが出たなと、同時期デビューのジョーイ・カルデラッツォと並んで新譜が出れば買ってチェックしていた。
BLUENOTEに移籍し数枚作品を出すけど、あまりセールス的には成績を出さなかったのか、リリースが途絶えがちだったのですが、この作品は近況を伝える意味で嬉しい作品。
ピアノトリオとしては、BULENOTEから出たロン・カーター、ジャック・ディジョネットとの作品以来だと思います。
トリオとしての一体感はもちろんこの作品のほうが上。
やはり、ビル・スチュアートのドラミングはカッコいいですね。
売れるのがよく分かります。
ドラム買い出来るドラマーって個人的にはこのビル・スチュアートとアル・フォスターかな、私の場合。次点でブライアン・ブレイド、ジェフ・ワッツというところでしょうか。
ジム・ブラックを忘れていた!この人のフォービート叩いた作品はほとんどないのだけれど、素晴らしいですね。
聴いたことのない方は是非一度聴いてみることをお薦め致します。
ケビン・ヘイズはどうかって?
はっきりいって、伸び悩みかな。
相変わらず上手いピアニストではあるのだけれど、テーマを変に崩しているのはメロディー重視派からは好まれないだろうし、アドリブ重視派からすればいい瞬間もあるだけれど、食い足りないのであります。
メルドーほど、先鋭的、感覚的に新しいものはないし、エレクトロニクスの使い方なども、中途半端な印象を受けるのでアルバム一枚聴いてもなんか満たされたものを感じないのです。
要するに、自分の演りたいことを絞りきれていない感じがするのです。
ビル・スチュアートのドラムに救われいると言ったら言い過ぎになるだろうか?
ピアニストとしては、有能であることは変わりないので今度の新作は一皮向けた姿を見せてくれることを期待したい。
で、この作品二度と聴かないかといったらそんな事はなく、結構聴くと思います。
BILL STEWART TRIOとして。
メンバーはKEVIN HAYS(P)DOUG WEISS(B)BILL STEWART(DS)
録音は2001年12月3日 BROOKLYN,NY
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tmalaby.jpg
現代テナー界、無冠の帝王、トニー・マラビーのトリオプロジェクト「ALIVE IN BROOKLYN」の第2作目。
このブログでもマラビーに関しては結構取り上げていると思うけど、このALIVEシリーズは中々入手困難で、一作目は実は未だに手に入れていないのであります。
オープニングは、サンチェスのウォーリッァーによる断片的なフレーズに呼応するかのように、ハーモニクスやファズトーンをうまく駆使したロングトーンを連発していて、それはあたかもサンチェス、レイニーによるキャンバスにマラビーがパレットで色をつけているかのように、感じる。
ここでのマラビーのサックスはいつも以上にカラーを感じさせ、途中インディオか中近東の辺のエスニックな自然発生的なスケールはとても印象に残る。
マラビーはここのところ、引く手あまたで自身の活動はもとより、ポール・モチアンやチャーリー・へイデン・リベレーション・オーケストラ、FSNTの新人のレコーディングへの参加など、シーンへの露出もここ最近非常に多くなってきている状況なのですが、中でもこのアライブ・イン・ブルックリンのプロジェクトは最もマラビーのやりたい事が素のままに表現されているグループのような気がします。

このグループでマラビーの狙いは、「秩序と破壊」がテーマだと思うのです。
アルバムを聴きとおしたら分かると思うのだけど、どこからどこまでがテーマでどこからがインプロビゼーションなのか分かりません。
作曲されているようなアドリブをするかと思えば、フリーに吹いているとしか思えないようなテーマが実はちゃんと譜面をもとに演っていたりするのではないかと思うのだ。
そして、常に一定の範囲内にコントロールされていて、60年代のフリージャズのように逸脱、暴走するようなことは決してない。
そのエリア内において最大限の振幅幅でマラビーのサックスは叫び、すすり鳴き、囁き、吹きすさぶ。
シャッター速度を遅めに切った風景を見ているかのような揺るぎ感覚がもっとも色濃く出たグループではないかと思う。
これぞ、「ブルックリンに生きる」の真骨頂ではないか。
FSNTや現代ジャズを追いかけている方は必聴の一枚と断言しよう。
メンバーはTONY MALABY(TS)ANGELICA SANCHEZ(WURITZER PIANO)TOM RAINEY(DS)
録音は2004年8月19,20日 BARBES, BROOKLYN, NY
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CHRIS ROBINSON
NYの黒人ピアニストCHRIS ROBINSONの2000年作品。
この作品もショップに入荷するはずだったのですが、今私の聴いている一枚しか手元にありません。
クリスは現在シンガポールに住んでいて、再入荷に暫らくかかるか、2000年の自主制作ということもあり、ディーラーのもとに入荷しない可能性もあるので、やきもきしています。
ジャケットを見ると、結構いい歳なのかなぁと思っていたのだけど、バイオグラフィーを確認しようと彼のHPを訪れるドレッドヘアーで意外に若々しい風貌なのに驚く。
ハーレム生まれのハーレム育ちで、教会やローカルなジャズバンドが修行の場だったようで、現場での実演から鍛え上げられたプレイは最近のピアニストにはない骨太なものを感じる。
まるでハーマン・フォスターやハロルド・ハリスのような愛すべきB級ピアニストのような面持ちがあるのだ。
新しいことは、ほとんど演っておらず、ひたすらグルービーにピアノで唄うことに専念するクリス。
そんな訳で決して器用といえるタイプのピアニストではないけど、力強さと楽しさが伝わってくる愛すべき21世紀のB級ピアニストだと思います。
ベーシストのロンカーぶりには笑ってしまいます。
演奏ナンバーは、
1. Nostalgia In Times Square
2. Yesterdays
3. Scrapple From The Apple
4. Rhythm-A-Ning
5. 20% Blues
6. The Days Of Wine And Roses
7. Bye Bye Blackbird
メンバーはCHRIS ROBINSON(P)WILLIAM GATHRIGHT(B)DARRYL ERYIN(DS)
2001年作品
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KURT LUND
カナダの無名のサックス奏者の2003年作品で、ピアニストがバニー・セネンスキーだったのでチェックしてみた。
1曲目「STABLEMATES」の出だしの数音でこのサックス奏者は買いだなと直感した。
なんのかんの言っても菅楽器奏者の命は音色とリズム感だと思う。
この二つさえしっかりして、リズムセクションが素晴らしければ(特にドラム)その作品は聴いていて必ず満足感が得られるものだと思うのです。
同じメロディー、フレーズを吹いても音色の良し悪しで説得力に雲泥の差がつくのは周知の事実。
プロの場合、説得力のある音色というのは、基本条件なわけで、そこからさらに自分自身のオリジナルな音色をつくっていくかなのだと思います。
そう、KURT LUNDのサックスは素晴らしい音色をしているのです。
嘘だと思うのならばジョーヘンの「LA MESHA」でのプレイを聴いてみて欲しい。
スローナンバーでは陰影感のあるしっとりとした情緒を映し出し、ミディアム以上の4ビートでは、快活で日の当たる明るい風景を思わせるような印象を残す。
明るいと言っても、脳天気な明るさでは当然なくて、深い情緒に満ちた明るさ。
正統派サックスの好きな方、例えば、ジョルジュ・ロベールのファンの方なんかにはきっと気に入ってもらえるのではないかと思う。
バニー・セネンスキーも壷にはまったアジのあるプレイを展開していてルンドをインスパイアしている。
選曲もゴルソン、ドーハム、パーカー、ティモンズ、ジョーヘンなどジャズメンオリジナルとスタンダードを半々に演奏していて聴いていて満足感が得られるように構成されている。
メンバーはKURT LUND(AS)BERNIE SENENSKY(P)DUNCAN HOPKINS(B)ARCHIE ALLEYNE(DS)
2003年作品
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HOME SAFELY
聴こう聴こうと思いつつ伸び伸びになっていた「HOME SAFELY」(FAVORITE),
ままよっとショップで売る分も含めて仕入れました。「バス」も一緒に発注したのですけど、こちらはまだ未入荷。本国で再プレスしているのかな?
ジャケットを見ていて気がついたのだけど、CUTIS CLARKの顔の横におぼろげに人の顔がぼんやりと写っている。幽霊?
ベースのERNST GLERUMではなさそうだし、どうでもいい事だけど何か気になる。
アルバムは全て、カーティス・クラークのオリジナルで、彼のピアノはあまり特徴のあるスタイルとは言いがたいが、堅実でありながら淡いブルースフィーリングとほの暗いコクのある雰囲気を携えた聴いていて飽きのこないピアノだと思う。
トリオの一体感もバッチリなのですが、やはり最大の聞き物はHAN BENNINKのドラミングでしょう。
ブラシのサクサク、サワサワ、シュワシュワ感もいいですし、シンプルなセットでこんなカラフルなドラミングが出来るなんてさすがですね!
昨年暮れに出たCD+DVDの作品のDVDを今からもう一度見てみよう。
ベニンクを四半世紀以上前、ペーター・ブロッツマンと一緒に見ているのだけど
出来たらこのトリオで来日してくれないかな。
メンバーはHAN BENNINK(DS)CURTIS CLARK(P)ERNEST GLERUM(B)
録音は1994年1月  AMSTERDAM
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ANDY SUZUKI
LA在住のテナーの隠れた名手アンディー鈴木の2003年クインテット作!
レア本に掲載されたセシリア・コールマンのクインテット作品と同じ、スティーブン・ハウステッターとの2菅編成となっています。
セシリア盤ではマイケル・ブレッカーに急接近したアンディーだったけど、この作品ではもっとオーソドックスなスタイルで吹いています。
フレーズの最後のしゃくりあげるところとか、フレーズ半ばのアーティキュレーションのつけ方なんか、ジョニー・グリフィンに最も近いかもしれない。
とにかく、ハードバップ一直線な吹きっぷりは、聴いていて気持ちがいいし、ベテランのファンを納得させるだけの説得力を充分持ち合わせていると思う。
エッジがそれほど立った音ではなくて、丸みを帯びた柔らかい音色もこの奏者の大きな魅力のひとつですね。
フロントを一緒に受け持つハウステッターもオリジナル性にはやや欠けるけど、これまたバップ魂満載の実直なプレイで悪くない。
日本のレコード会社も何とかアレンのCD制作も結構だが、こんな隠れた逸材を見つけ出してレコーディングし、発売するのが役割のひとつだ思うのだけどいかがだろう。
「ジャズ構造改革」の本でも日本のレコード会社(ちなみに、私的に物言いつけるところが非常に多く、クリスさんの「雨の日にはジャズを聴きながら」の掲示板でいろいろ書き込んでいます。)の問題点に言及していたが、この点に関しては大いに賛同するのであります。
ほんと、業界自体悪いので、儲からない事は最初から手をつけない、リスクをおかさない、売り出し方をJ-POPの手法を導入しているなど、頷ける点多々あり。
大量の広告費を投入し、新作のなかで、SJのカラー広告ページやレビューの大見出し作品の結構な作品があてはまるから怖い。
こんなものを買って満足してしまうファンがいると思うとゾッとする。
広告費の元を取る為にマーケティングが始まるわけだ。
1万枚、2万枚売らないといけないようになるワケ。
30年聴いてきて思うのだけど通常、ジャズ作品がそんなに売れるわけないのである。
その時点で無理がある訳で、そこから日本企画の私がよく言っているところの加工臭(つまりわざとらしさ、不自然さ)が滲み出てくるのであります。

考え方をこんな風にしてはいかがだろう?
広告は出さない。(SJが潰れるか?)1000枚、2000枚のプレスにする。
国内だけで売ろうとは思わず、世界全体に目を向けるようにするのだ。
レコード会社が、英語のホームページを作ってインターネットで直接販売すればよいのではないか?
海外では既にこんなこと常識だと思うので、この点こそ日本のレコード会社の怠慢だと思う。

それとも、世界に向けてディストリビュートするに値する作品をつくる自身がないのだろうか?
日本で2000枚だとしても、それが本当にいい作品だったら全世界で5000枚、ひょっとしたら1万枚くらい売れるのかもしれないのだ。
今こそ、現状の制作方法、販売方法、販促費を見直して仕切りなおしをすべき時だと思うのだけど、このブログを読んでいる皆さんはどう思われますか。
私が日本のレコード会社の「構造改革」して欲しいのはこういう点です。

話が脱線、ANDY UZUKI/BLUE ERSPECTIVE
メンバーはANDY SUZUKI(TS)STEVE HUFFSTETER(TP)NICK MANSON(P)DEAN TABA(B)KENDALL KAY(DS)
録音は2003年2月1,2日
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GORDON BECK
年明け早々入荷するも、直ぐに完売、再オーダーしたのがようやく入荷いたしました。
これでようやくちゃんと聴けます。
いやー、待った甲斐があった素晴らしい作品です、これは。
ゴードン・べックはピアニストとして、全くさび付いていないですね。
20代の新進気鋭の天才ピアニストが弾いていますと言われたらそのまま信じ込んでしまうほど瑞々しく新鮮に響くピアノが1曲目から聴けます。
2曲目から、PIERRICK PEDRONが参加。「廃車ジャケ」の2001年デビュー作からこのアルト奏者をチェックしているけど、少し地味だけど堅実で上手いサックスプレイヤーです。音にパッショネートが宿っていて、この感じ誰かに似ているなぁと感じ頭の中で反芻していてさっき思い出しました。
音の表情がスティーブ・ポッツに似ているのですよ。ポッツもあまり有名なサックス奏者ではないので、分かりにくい喩えかもしれないけど、そうなのだから仕方がないか?
スタイルはもちろん、ポッツよりは正統派ですけどね。
あっー、PEDORONよりGORDON BECKだった。
ベックはいったいいくつになるのだろう?
鋭い切り込みのピアノは衰えをしらず、すさまじい集中力でテンションがとぎれる事がない。
かといって聴いているこちらが疲れると言う事はなくて、過去の作品は凄いいのだけど疲れる作品でもあるという認識だったので、これは、ベックの成長といったらよいのだろうか?
こんなに、ハイクオリティーな演奏がライブで聴けるなんてフランスのジャズファンは幸せ者だ!
メンバーはGORDON BECK(P)PERRICK PEDRON(AS)BURUNO ROUSSELET(B)PHILIPPE SAIRAT(DS)
録音は2005年2月25,26日 ERANC OINOT JAZZ CLUB, PARIS
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BARBARA CASINI
BARABARA CASINIというイタリアの素晴らしいボーカリストをはじめて聞いたのはエンリコ・ラバとのLABEL BLEUの作品だった。
その深みがありながら透き通るぐらい美しい歌声に一発で魅了されてしまった。
この作品は2004年録音の最新作で、バックはRICCARDO ARRIGHINI TRIOに数曲でFABRIZIO BOSSOが参加している。
全曲アントニオ・カルロス・ジョビン集となっていて、CASINIの声は、ジョビンの楽曲にとてもマッチするのでこれは好企画盤なのが聴かずとも予想できます。

アルバムはRICCARDO ARRIGHINIとのデュオによる「ルイーザ」から、まるで夜の帳が滑らかに降りるように、始まる。
バーバラ・カッシーニの唄は、普通ボサノバ歌手がリオの海岸に打ち寄せる波や、降りそそぐ太陽の光、咲き乱れる草花、そういった明るい昼のイメージがするのに対して夜の雰囲気がする。
昼の喧騒感から解放されて、深夜のバールで素の自分に戻れる時、バーバラの唄ほどしっくりくるものは、他にあまり無いかも入れない。
光と影のコントラストを思わせる深い陰影感に包まれたブラジルの歌手顔負けのサウダージ感は、ブラジル音楽大好き人間の私にとって、また一枚宝物が増えた感じです。
これは、早くも今年のボーカル一等賞かもしれない。
ボッソが参加して、ソロを吹きだすと突然、ジャズの芳香な香りに包まれるから不思議。
ヒカルド・アリギーニの歌伴も素晴らしく、この点からも彼が素晴らしいピアニストなのが分かる。
ブラジル音楽として最高の一作だし、一級のジャズボーカル作品でもあり、1人でも多くの方に聴いてもらいたい作品だと思います。

オラシオさんなら、分かってくれますよねぇ!
メンバーはBARBARA CASINI(VO)RICCARDO ARRIGHINI(P)FABRIZIO BOSSO(TP,FLH)MASSIMO MORICONI(B)MASSIMO MANZI(DS)
録音は2004年9月7日  ITALY
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JAMES PEARSON
イギリスの若手ピアニストの2004年トリオ作品。
今日第2便が入荷したのだけど、実はこの作品、今月ぶっちぎりで売れている作品で、需要に供給が追いついていない状況。
予約いただいているお客様の分は、なんとか今回の入荷分で確保できました。
発注残が次回入荷するのは何時のことやら。
流通が 英→米→日と経るのでどうしても時間がかかってしまうのです。
現在、少量だけ余裕あり。

何故売れるのか、聴いてみて、直ぐに理由が分かった。
心弾む演奏ってこんな演奏のことを言うのだろう。
JAMES PEARSONのピアノを聴いていると、身も心も軽やかになってくる。
スインギーで淀みの無いキーワークは、何の迷いもなく、楽曲のど真ん中をついた剛直球であり、聴いているこちらの気分も晴々してくるという仕掛け。
筋金入りのジャズファンには、そうだなぁ、エディー・トンプソンの「少女」を思い浮かべてもらえば、一番分かりやすい喩えになるかな?
同じ少女のジャケットでも、ジェイムズ盤のほうが、あどけなさの残る少女のフォトが使われているけど、演奏内容はエディー盤に勝るとも劣らぬ出来映えなのを、
保証いたします。
いやぁー、これは本当に素晴らしい作品に出合った。
選曲もGOOD!「THE BEST THINGS IN LIFE ARE FREE」「LONDON BY NIGHT」「GUYS AND DOLLS」や滅多に耳にしない「THE IMPOSSIBLE DREAM」(ソロ)など通を唸らせる心憎いセレクト、オリジナルにエリントンとハンコックも1曲づつ。

日本全国に100人程いるコアなピアノトリオファンは勿論、澤野のピアノトリオなどを聴いている一般のピアノトリオファンにも、自信をもってお薦めできる快適リラクゼーション軽快正統派ピアノトリオ盤として、VENTO AZUL RECORDS営業部一同、
大プッシュする一枚でございます。
メンバーはJAMES PEARSON(P)MATTHEW SKELTON(DS)JEREMY BROWN(B)
2004年作品
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ROBERT WAYNE

「ウェインがウェインを演奏する。」
アルバムタイトルを見るやいなや、即仕入れようと思った。
私のウェイン・ショーター好きはこのブログをよく訪問いただいている方ならご存知だと思いますが、サックス奏者としてのウェインと同じくらい作曲家として惚れ込んでいるのですよ。
それがもとで、自分のコレクションのウェイン・ショーター・カバー曲を全てまとめたページを作ったくらいですからね。
2004年の夏につくったもので、あれからカバー曲の数も大分増えていると思うので時間をつくって更新したいと思っているのですが・・・
これは、「いいよ!」とお薦めのものがあれば、教えて下さい!

この作品でカバーされているショーターナンバーは5曲。
「BLACK NILE」「SPEAK NO EVIL」「INFANT EYES」「NIGHT DREAMER」「WITCH HUNT」の5曲。
ウェインの曲を正面きってテナーで吹いたものは、調べてみると意外に少ないんです。そのあたりのことは、先のページの分析結果をご参照ください。
当アルバムのテナー奏者、RAY BLUEは無名だけど、ヒューストン・パーソンのような、サックスを吹く。インナースリーブの中の写真を見ても黒人なんか、白人なのか分からない。
ジャッキー・マクリーンのように、1/4か1/8、黒人の血が混じっている様にも見える。
ウェイン・ショーターほどミステリアスなサックスではなく、ピアニストのマイケル・コクレインが数年前STEEPLACHASEからリリースした「ショーター集」と同じく、もっと分かりやすい演奏。
楽曲のよさを、よく理解してあまり背伸びせず、等身大の演奏を心掛けているところが、逆に評価できるかも知れない。
曲の良さを改めて再認識しました。
日常聴きに適したショーターカバーアルバムの登場です。
メンバーはROBERT WAYNE(DS)RAY BLUE(SAX)DANIEL DEEGS(P)NIKLAS DEEGS(B)
IGOR RUDYTSKYY(TP)RUDGER GEMDT(SYNTH)
2005年作品
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SAYURI GOTO
福岡出身の後藤小百合は、1997年からニューヨークに在住している。
このアルバムは、師匠ベニー・パウエルをコ・プロデューサーに迎え、NAT REEVES,GENE JACKSONの強力メンバーとともに録音した彼女の2005年デビュー作です。
日本のレコード会社から毎月のように女性ピアニスト、ボーカリストの新作が発売されているのだけど、中には?、?、?のようなものも含まれていてその辺はカスをつかまされないように聴き分ける耳が必要です。
雑誌の広告写真に惑わされたりや、評論家のレビューを鵜呑みにしてはいけません。
業界自体余裕が無いので、売れるものばかりをどんどん出していくのが今のレコード会社(以前はもう少しマシだった。)のやり口。
必然的に内容の薄められた作品や普通だったらデビューが早すぎるジャズミュージシャンとして未熟な新人の作品がリリースされていくので、騙されないようにしないといけません。

その点、この作品は安心して聴いてもらえると思う。
1997年にNYに渡ってピアノのを学び、そのまま活躍している後藤のピアノは叩き上げの骨太さがあるのだ。
Bruce Barth、Andy Ezrin、Mike Longoらにピアノのレッスンを受け、ベニー・パウエルのバンドで活躍、様々な著名ミュージシャンと共演し、Blue Note、Birdland、the Lenox Lounge、 the Jazz Gallery、 Kitano、 CBGB'sなどのNYの有名ジャズクラブに出演経験のある彼女は、ネイティブスピーカーなみのジャズ言語で喋れる(演奏できる)才能の持ち主。

日本の他の女性ピアニストで、後藤よりもテクニックやパワーのあるピアニストは実際数多くいる。が、そういう中にはあまりにも自分の長所だと思っているところを強調しすぎて、音楽自体が不自然でバランスを崩していると言ってよいものも少なくない。
演奏が作為的で、聴いていてしらけてしまう部分が目に付くのだ。
NYで下積み生活を続けている後藤のピアノにはそういう部分が全くなく、表現に無理が無く、自然なのであります。
そうした中で自分の持ち味を出し、ジャズ的なハプニングを盛り込んだ、感情表現にも長けた演奏をする後藤は、これからの成長をますます期待できるピアニストだと思います。
「AKIHA」「MIDGET」「FLASHBACK」「NIGT,NEVER END」「I MISS YOU」などオリジナルも佳曲揃いで良い。
メンバーは後藤小百合(P)NAT REEVES(B)GENE JACKSON(DS)
録音は2005年2月11日  NYC
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MATT CRISCUOLO
NY、ブロンクスに住むアルトサックス奏者、MATT CRISCUOLOが、ラリー・ウィリス、フィル・ボウラー、スティーブ・デイビス、エリック・マクファーソン、レイ・マンティラと録音した2005年作品。
リーダーだけが無名ですね。
MATT CRISCUOLOのサックスの音色はとても個性的です。
ちょうどケニー・ギャレットのサックスを初めて聴いた時と同じ様に、そこにオリジナルなものを感じます。
少しミュートされたというか、くぐもった感じがしてそれでいて丸みをおびた柔らかな太い音は好みは分かれるかもしれないけど、個性的であることは確か。
サックスは、スティーブ・スレイグル、ディック・オーツ、ウォルト・ワイスコフ、リッチー・ペリーについて習った事があるらしい。
このアルバムでは、マットのワンホーンカルテットとスティーブ・デイビスのトロンボーンとの2菅編成の2種類のフォーマットで構成した事が成功しているといえます。
アルバム一枚をまるまる、マット1人のサックスで通すにはまだ、少し荷が重いように感じるからです。
結果としてバリエーションに富んだ飽きの来ないアルバムとなったので、プロデュースが成功しているといえるでしょう。
ラリー・ウィリスらベテラン、中堅勢がマットを盛り立ててアルバムを成功に導いているといえるのかも入れない。

ノースダコタやアーカンソーから出てきた若いミュージシャンがNYの小さなジャズクラブでシットインして、深夜コルトレーンをやみくもに吹きだしても誰もそれを笑わない。皆が穏やかにそれを見守る心の広さと温かさがNYという街にはあるらしい。

マットがそうだといっているのではないのだけれど、このアルバムを聴いているとふとそんな事を思い起こしてしまった。
メンバーはMATT CRISCUOLO(AS)LARRY WILLIS(P)PHIL BOWLER(B)STEVE DAVIS(TB)ERIC McPHERSON(DS)RAY MANTILLA(PER)
2005年作品
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BRIAN DICKINSON
昨日、カナダに先月20日に注文していたCDが約20枚ようやく届いた。
アメリカからだと、最短3,4日で届くのに何故こんなにかかるのか?疑問です。
その中に、ローン・ロフスキーというギタートリオを試聴して気に入ったので2枚注文、そのアルバムを真っ先に紹介しようと思っていたのだけれど。実際聴いてみて最初の印象と少し違うのですね。
ちょっと詰めが甘いというか、もう一枚のアルバムも早く聴いてみようと思っています。
そこで、急遽BRIAN DICKINSONの2003年アルバムに変更いたします。
レア本で紹介されて以来、人気急上昇のブライアンだけど、このアルバムではテナー界の無冠の帝王JERRY BERGONZIを迎えてのカルテット作なので期待できそうです。
1988年にREDの「STANDARDS GONZ」を聴いて以来、ずっとこのテナー奏者を追いかけているけど、やはり、バーガンジィーに最もあう編成はカルテットによるバリバリのモードジャズだと改めて思った。
この作品では、ブライアン・ディッキンソンがサルバトーレ・ボナファデやジョーイ・カルデラッツォに勝るとも劣らない気合の入ったソロを展開していてバーガンジィーをインスパイアしている。
あっー、これはブライアン・ディッキンソンのアルバムだった。
アルバム収録曲が、ディッキンソン4曲、バーガンジィー4曲で、おまけにディッキンソンの曲もバーガンジィーの曲?と間違うほどジェリーのテナーにしっくりとあったナンバーが選ばれているので、そう思ってしまったのだろう。
とにかく、アルバムの統一感があって語り口がビタースイートでハードボイルドなのはバーガンジィーの本領発揮というところか?
ピアニストのアルバムにバーガンジィーが参加したカルテット作の中では、フレッド・ハーシュの「ETC+ONE」やギド・マヌサルディのSOULNOTE盤と同じくらい素晴らしい作品になったと思う。
ところで、バーガンジィーって来日したことあるのだろうか?
私が今、ボブ・ロックウェルと並んで一番聴きたいテナー奏者の1人であります。
メンバーはBRIAN DICKINSON(P)JERRY BERGONZI(TS)JIM VIVIAN(B)TED WARREN(DS)
録音は2002年6月9日 TORONTO
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LAURA TAYLOR
このアルバム先月発見したのだけど、直ぐに売り切れ、今日やっと入荷致しました。
とても自主制作とは思えない豪華メンバーのピアノトリオがバックを受け持っています。
エディー・ゴメスがベース、ルイス・ナッシュがドラムス、そしてピアノがなんと、スティーブ・キューン!!!
ヴィーナスの新作?と間違えるようなメンバーであります。

これは、最初から今年発売されたボーカルアルバムの中で1,2を争う素晴らしい出来だと断言してしまおう。
アン・フィリップス(彼女は健在)の再来と言ったらよいだろうか?
再来という言い方よりアルバムから受けるイメージがとても良く似ているのです。
LAURA TAYLORが唄いだすと、たちまち辺りの景色は淡いブルーに包まれる。
何ともいえない寂寥感が心地良いのである。
ジャズ度は昔のアン・フィリップスより強く、涼感漂うボイスの中に芯の強さも感じさせ、アルバムを通してだれることがない。
素晴らしいトリオをバックにしても、全く物怖じせず堂々たる歌いっぷりの良さは、たいしたものだ。
「BUT NOT FOR ME」「YOU'RE MY THRILL」「MY FUNNY VALENTINE」「JUST FRIENDS」「GOHOST OF A CHANCE」「I FALL IN LOVE TOO EASILY」「LET'S GET LOST」「HE WAS TOO GOOD TO ME」
チェット・ベイカーゆかりのナンバー中心で構成されているが、彼女のオリジナル「SPELLBOUND」とスティーブ・キューンの「SPEAK OF LOVE」も中々の佳曲。
見事にチェットの音楽が持っていたコンセプトを表現していてもう一度言うがこれは、素晴らしい。
大手の会社が契約してリリースしない限り、将来の幻盤になるのは、間違いないので確実に入手されたし。
スティーブ・キューンのファンの方ももちろん要チェックなのは言うでもありません。
メンバーはSTEVE KUHN(P)EDDIE GOMEZ(B)LEWIS NASH(DS)
2006年作品
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GEORGE MANCINI
「ワンホーントロンボーン」「アローン・トゥゲザー」この二つのキーワードで、ピンときた人は寺島さんのファンといって間違いない。
そう、このアルバム、まさに寺島さんに聴いてくれといわんばかりリリースされたような気がさっきからしてしょうがないのです。

ジャケットの表も裏も雪だなぁと思ってGEORGE MANCINIの出身地を調べてみるとアラスカなのでした。
自主制作らしく、デジカメでとったであろう写真が画像縮小の折、横に縮まりすぎて変になっているところも、お粗末でジャケとしては、最悪な出来かもしれない。
店頭で見てもこういう作品は、まず買わないだろう。
盤自体もCD-Rで、CD番号もなし。
まさに、自主制作100%の面構えの作品だ。

「顔(ジャケット)見て判断するな。」の良い例だろう。
中身(演奏)は、最高なのでよ。この作品。
実に男っぷりのいい吹き方をするトロンボーン奏者なのであります。
ストレートで、豪快でありながら、曲の聴かせどころを見事に捕らえた繊細さも持ち合わせる見事な吹きっぷり。
フランク・ロソリーノのテクニック、パワーとカーティス・フラーの親しみやすさ、大衆性をあわせもった奏者と表現したら、オーバーか?
それぐらい、思わず応援したくなるような魅了溢れたトロンボーンを吹く。
私のお気に入りは、フランク・フォスター「SIMONE」とレオン・ラッセル「THIS MASQUERADE」。
ジャズ演奏で何人かが、「マスカレード」をカバーいているけど、ようやく本命にめぐり合えたような気がする。

さて、寺島さんは、1曲目の「ALONE TOGETHER」を気に入るだろうか?
メンバーはGEORGE MANCINI(TB)TOM BARGELSKI(P,KEY)DAVID FOSTER(B)PRESTON KEATING(DS)
2006年作品
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PLUNGE
スウェーデンの若手サックストリオに重鎮BOBO STENSONが、参加した2005年作品。
このPLUNGEというグループの第2作目になり、ステンソンの参加は決してゲスト的なものではなく、2002年秋に共演して以来、数多くのツアーをこなし、その結果としてこのCDがリリースされたらしい。
PLUNGEというグループとしての音楽性とBOBO STENSONというスカンジナビアでも随一の素晴らしいピアニストの個性が、上手い具合に融合した作品だといえるでしょう。
ともすれば、爆走轟音系に走りがちな、エネルギーに溢れたパワフルなPLUNGEの音楽性が薄められることなしに、ステンソンのダイナミクスに富んだ様々な表情をもったピアノによって、より深いところまで音楽が引き上げられているような印象を受ける。
そして、ステンソン自身のピアノも、自己のトリオでは見せることのないアグレッシブな表現を垣間見せ、面白いことになっている。
「爆音」「観念」「抽象」「耽美」「集中」「拡散」言葉の羅列では実際彼らの音楽の多面性は言い表せないのであるが、一度是非耳にしてもらいたい音楽です。
ジャズは、4ビートでスイングしてなきゃという方には間違ってもお薦めしないが、ECMファンの方には喜ばれると思います。
メンバーは、BOBO STENSON(P)ANDREAS ANDERSSIN(SAX)MATTIAS HJORTH(B)PETER NILSSON(DS)
録音は2005年1月14,15日
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BOBBY WEST
LA在住のベテランピアニストがインドネシアで録音したピアノトリオアルバム。
この作品も、暗い海底のようなジャケットで冴えないのであるが、中身は一級品なのであります。
1曲目ケニーバロン作「TRAGIC MAGIC」を聴いた途端、海底じゃなく、天空に舞い上がるような爽快感溢れた、前へ前へ推進していくエネルギッシュなピアノに聴き耳をたてることでしょう。
ルイジアナで生まれロスで活躍しているボビー・ウェストは仲間内のミュージシャンの信望も厚く、音楽の為に全身全霊を捧げるかのような渾身のプレイは高い評価を得ている。
今までBranford Marsailis、Wynton Marsalis、Eddy Harris、Donald Byrd、Billy Higginsらと共演している。
フレーズの説得力が凄いのです。オリジナル作などアップテンポのモード演奏主体のアドリブなんだけど、音が音階に流されていないというか、ともするとスケールの順列組み合わせ的スピード演奏になりがちなものを、この人の場合フレーズが歌っているのですね。コレって結構凄いことなのではないかなと思う。
選曲もジャズマンオリジナルとスタンダードがイイ感じで配分されていて満足いく仕上がり具合です。
「ANA MARIA」「I FALL IN LOVE」「THIS DIG OF YOU」「EASY TO LOVE」「LAZY BIRD」などなど。
ひとつ疑問がある。
この作品何故インドネシアで録音されたのだろうか?
メンバーはBOBBY WEST(P,SYNTH)MICHAEL CARR(B,ELB)TAUFAN GOENARSO(DS)
2004年作品
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IGNASI TERRAZA
カタロニア民謡などトラディショナルナンバー、テラザのオリジナル、スタンダードがバランスよく選曲されていて、今回もやられたって感じです。
実際こう来てこう来るなっと長い間ジャズを聴いてきた者だったら、予測可能のメロディーが予定調和的に展開されるのだけれど、分かっていても心地良く、まだまだ聴きたいと思わせるのは、テレザのジャズピアニストとしてのスキルによるものだろう。
言い方が悪いかもしれないけど気持ち良く騙してくれるのであります。
映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を何回観ても面白いようにテレザのピアノは何回聴いても飽きることが無いのである。
ヴァレンシアオレンジのように瑞々しくビタースイートで、春の穏やかな明るい日差しのような、柔らかく深みのあるテラザのピアノは今回も絶好調です。
SJ4月号輸入盤紹介にも掲載中。
ピアノトリオファン必携なのは、もちろん正統派ジャズファンは要チェックの一枚。
メンバーはIGNASI TERRAZA(P)PIERRE BOUSSAGUET(B)JEAN PIERRE DEROUARD(DS)
録音は2005年9月26,27日
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ANDREW CHESHIRE
これは、ニューヨークで活躍するANDREW CHESHIREの1996年デビュー作で、これ以降も6枚くらい作品を録音していて自主制作とはいえ、創作意欲が旺盛なギタリストです。
このデビュー作だけでなく、それら全部結構、名の知れたミュージシャンとの作品が多くて仕入れるのに目移りして困りました。
結局、DON FREIDMANが参加していることでこのデビュー作に決めたのであります。
デビュー作と言う事もあって、力の入った作品となっています。

CHESHIREのギターは、色々なギタリストからの影響が窺えるのだけど、一番最初に感じるのは、音の大きさ、音圧の強さですね。
弦楽器の場合、弦板と弦の間の高さと、速弾きのスピードは普通、比例するとも思うのだけど、速さの為に音圧の弱い、腰の弱い音色のギターを時々耳にする。
メセニーやジム・ホールなんか音色の繊細さで勝負しているところもあるので、音圧自体が別に問題ではないのだけど、要は表現したい音楽と、実際に出ている音の説得力、必然性が、どれだけマッチしているのかなのだと思う。
速さを追求するあまり、音圧が不均等で粒立ちにかけるギターは私はあまり、良いとは思わない。
この点に関して、ヴァーチュオーゾは、やはり全盛期のパット・マルティーノに勝るものはいまだあらわれていないと思っています。
速さと音の粒立ち、ギタリストなら永遠に抱える問題といえるでしょう。

このアルバムのギタリスト、CHESHIREの場合、さっきも言ったけど速さより音の大きさを優先させたように感じるのです。
速いフレーズを弾いていないというのではありません。相対的に受ける印象度の問題。喩えが相応しいかどうか分からないけど、チャーリー・クリスチャンが現代で蘇ってギターを弾いているような音色なのですね。
一本調子なところは、あるけどこういうスタイルのギタリストはあまりいないので、ちょっと面白い存在だと思う。
バックのベテラン3人はもちろん素晴らしいサポートをしているのは言うでもありません。
メンバーはANDREW CHESHIRE(G)DON FRIEDMAN(P)RON McCLURE(B)MATT WILSON(DS)
録音は1996年3月24日
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ELLYNNE PLOTNICK
NYのボーカリスト、ELLYNNE PLOTNICKが2004年にひっそりと自主制作したアルバムで、メンバーが素晴らしい。
STEVE CARDENAS(G)MARCUS MCLAURINE(B)PETE MALINVERNI(P)
収録されているナンバーも好みの曲ばかりで、これは仕入れようと即決。
ドラムレスで、実際NYでは、ジャズクラブ以外でこういう音楽がホテルのラウンジやレストラン、サルーンなどで演奏されてるのだろうなと思い巡らせながら聴くことにした。

幼少の頃からジャズとブラジル音楽に惹かれていたELLYNNEは、ハイスクールで唄い始め、90年の初め頃には、アコースティックなパンクバンドを結成し、作詞作曲を始まる。
何かもの足りなさを感じた彼女はジャズに再会し、本格的なボイストレーニングを開始し、シーラ・ジョーダン、バリー・ハリス、マーク・マーフィーのワークショップなどにも積極的に参加。
NYのクラブやジャムセッションで歌い始めるようになる。
現在はコネティカットに住み、NYメトロポリタン地区で活躍している。
ざっとこんな経歴のELLYNNEだが、ストレートでナチュラルな歌唱は好印象を残す。
アルバムはマリンヴェルニ、マクローリンとカルデナス、マクローリンのチームに分かれて収録されており、バックを受け持つ3人が一緒には演奏していない。
せっかくコレだけのメンバーを揃えたのだから何曲かトリオ編成のナンバーを入れたら変化もついてさらに良くなったと思うのだけど・・・
たぶん日程が合わなかったのだと思う。
スティーブ・カルディナスの演奏はFSNTやポール・モチアンのバンドでのトンガリ系のプレイしか聴いた事がなかったので、こういうアコギによるオーソドックスな演奏は新鮮に聴こえる。
彼女はまだ大歌手でも何でもない名前の知れていない歌手だけど、彼女のようなポテンシャルを感じる無名の歌手を先物買いするのも、ジャズボーカルファンの醍醐味だと思います。

1. A Flower is a Lovesome Thing
2. A Time for Love
3. So In Love
4. Never Let Me Go
5. Daydream
6. Virgo
7. How Insensitive
8. Moon and Sand
9. Round Midnight
10. I've Never Been in Love Before
11. Skylark
12. I Remember Clifford
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